カテゴリー: 離婚とお金

  • 離婚前に見直したい保険の名義・受取人|解約返戻金は財産分与の対象になる

    離婚しても、保険の「受取人」は自動では変わらない

    離婚が成立しても、保険の受取人の指定が、自動的に書き換わるとは限らない。受取人を誰にするかは、契約者が保険会社に意思表示をして決めるものだからである(保険法43条)。

    たとえば、夫が契約者・被保険者で、受取人が妻になっている死亡保険がある。離婚後も、契約が続いている限り、受取人の欄は、そのまま残っていることが多い。続柄(「妻」など)で受取人を指定している契約では、離婚後の扱いが、保険会社の約款や契約内容によって異なる場合がある。

    離婚を考え始めたら、保険の名義と受取人は、早めに確認しておく項目の一つである。

    出典: 保険法(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/420AC0000000056)、民法(同 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)。2026年10月15日確認。

    1. 確認する3つの役割

    保険には3つの役割がある。

    役割 内容 離婚時に問題になること
    契約者 保険料を払い、契約を変更・解約できる 離婚後も、誰が払い続けるのか。解約や名義変更をするのは誰か
    被保険者 保障の対象になる人 離婚後も、その人の保障を続ける必要があるか
    受取人 保険金・給付金を受け取る人 離婚後も、元配偶者を受取人のままにするか

    学資保険では、契約者が親、被保険者が子どもで、受取人が親になっていることが多い。離婚で、子どもの養育を主に担う人が変わる場合は、契約者の変更も含めて確認が必要になる。

    2. 解約返戻金は、財産分与の対象になり得る

    保険の中には、解約したときに解約返戻金が戻るものがある。終身保険、養老保険、個人年金保険、学資保険などである。掛け捨ての保険は、解約返戻金がないか、少ないことが多い。

    婚姻中に払った保険料で積み上がった解約返戻金は、婚姻中に築いた財産として、財産分与の対象になり得る。

    財産分与では、家庭裁判所は、婚姻中に取得・維持した財産の額や、それぞれの寄与の程度などを考慮する。そして、寄与の程度が異なることが明らかでなければ、等しいものとして扱われる(民法768条3項)。

    解約返戻金を、いくらとして評価するか、分与の対象とするかは、事案によって異なる。保険会社に、現時点の解約返戻金の額を問い合わせて、数字を確認しておくとよい。

    3. 受取人を変える手続きの基本

    受取人の変更には、次のルールがある。

    • 受取人の変更は、保険契約者が、保険事故が起きる前に行う(保険法43条1項)。
    • 変更は、保険会社への意思表示によって行う(同条2項)。
    • 死亡保険の受取人の変更は、被保険者の同意がなければ効力を生じない(同45条)。

    たとえば、夫が契約者、妻が被保険者の死亡保険の受取人を、夫が変更する場合は、被保険者である妻の同意が要る。

    傷害疾病定額保険(医療保険など)の場合は、別の規定がある(同74条)。契約の種類によって扱いが違うため、手続きは保険会社に確認すること。

    4. 話し合いの前に、やってはいけないこと

    • 勝手な解約: 解約返戻金は、財産分与の対象になり得る財産である。話し合いの途中で、一方的に解約すると、後で大きなトラブルになりやすい。
    • 勝手な受取人の変更: 契約者が単独でできる場合でも、離婚協議中の変更は、相手との信頼関係を損なう。
    • 保険料の払い込みを、突然止めること: 契約が失効して、保障がなくなる場合がある。

    変更や解約を考えるときは、事前に弁護士や法テラスに相談することをおすすめする。

    5. 離婚前の保険チェックリスト

    1. 夫婦それぞれの保険証券を、すべて集めた
    2. 契約者・被保険者・受取人を、一覧にした
    3. 解約返戻金のある契約と、その現在の額を確認した
    4. 学資保険の契約者・受取人を確認した
    5. 離婚後も続ける保険と、見直す保険を、書き出した
    6. 勝手に解約や変更をしていない

    保険の見直し全体の考え方は、保険の見直しは何から?で整理している。

    6. 相談先

    • 保険会社: 契約内容、解約返戻金の額、手続きの方法の確認。
    • 弁護士・法テラス: 財産分与の対象や、評価の考え方。
    • 保険の無料相談窓口: 契約内容を整理し、離婚後に必要な保障を考える。

    保険の無料相談は、収入のある方が対象のサービスが中心である。加入を急かされても、その場で決めず、持ち帰って考えてよい。

    まとめ

    • 離婚しても、保険の受取人の指定は、自動では変わらないことが多い。契約ごとに確認が必要。
    • 受取人の変更は、契約者の意思表示で行う(保険法43条)。死亡保険は被保険者の同意が要る(同45条)。
    • 解約返戻金は、婚姻中に築いた財産として、財産分与の対象になり得る(民法768条3項の考え方)。
    • 話し合いの前の、勝手な解約・受取人の変更・払い込み停止は避ける。

    ※本記事は一般的な情報であり、個別の事案への助言ではありません。この記事は、監修者の阿部泰尚が内容を確認しています(監修範囲は監修者紹介をご覧ください)。

  • 住宅ローンが残る家は、離婚するとどうなる?売却・名義・オーバーローンの考え方

    離婚しても、住宅ローンの返済義務は自動では消えない

    離婚して、夫婦の関係が終わっても、金融機関との住宅ローンの契約は、そのまま続く。

    ローンの名義が夫のみなら、離婚後も返済義務は夫にある。夫婦で連帯債務にしていたり、一方が連帯保証人になっていたりすれば、離婚しても、その責任は残る。「家は妻が住み続けて、ローンは夫が払う」と話し合いで決めても、金融機関に対しては、契約どおりの責任が続く。

    離婚の話し合いで、いちばん揉めやすく、後から困りやすいのが、住宅ローンが残る家の扱いである。

    1. まず確認する3つの数字と書類

    確認すること 見る書類
    家の名義(誰の持ち物か)と、抵当権の設定 登記事項証明書(法務局で取得できる)
    ローンの残高、返済額、名義人(連帯債務・連帯保証を含む) ローンの返済予定表、残高証明書、契約書
    家の価値(いくらで売れそうか) 不動産会社の査定書

    家の価値からローンの残高を引いた額が、実質的な財産になる。

    • 売却額 > ローン残高:アンダーローン。差額が手元に残る。
    • 売却額 < ローン残高:オーバーローン。差額を、自己資金などで返済しないと、抵当権を外して売ることが難しい。

    財産分与で分けるのは、家そのものではなく、ローンを差し引いた後の価値である(婚姻中に築いた財産として、民法768条3項に基づき、寄与の程度などを考慮して定められる)。

    2. 4つの選択肢

    ① 売却して、ローンを清算する

    家を売って、ローンを返済し、残ったお金を分ける方法である。

    • 利点:ローンの責任から解放される。分け方が明確。
    • 注意点:オーバーローンだと、不足分の用意が必要。売却に時間がかかることがある。

    ② 一方が住み続ける

    どちらかが、そのまま住み続ける方法である。

    • 利点:子どもの転校・転居を避けられる。
    • 注意点:ローンの名義人と、住む人が違うと、トラブルになりやすい。名義人が払えなくなると、住み続けることが難しくなる。ローンの借り換え・名義変更・連帯保証の解除は、金融機関の承諾が必要で、収入や審査の結果で認められないことがある。

    ③ 賃貸に出す

    住まずに、貸して家賃でローンを返す方法である。

    • 注意点:住宅ローンは、居住用を前提にした契約が多く、契約で賃貸が制限されている場合がある。金融機関への確認が必要。

    ④ 当面は現状を維持する

    離婚後も、しばらくそのままにする方法である。

    • 注意点:問題を先送りにするだけで、共有名義のままだと、後から売却や処分に双方の同意が必要になる。

    3. 話し合いの前に、整理しておくこと

    1. 家の名義と、ローンの名義人・連帯保証人を確認する
    2. ローンの残高と、毎月の返済額を確認する
    3. 複数の不動産会社に、査定を依頼して、価値を知る
    4. 頭金に、親からの援助など、一方の特有の資金が入っていないか確認する
    5. 離婚後に、誰がどこに住むのか、子どもの学校や通勤を踏まえて考える
    6. 別居後の生活費と、ローンの返済を、どう負担するかを決める

    4. 査定を取るときの注意

    売却を検討するときの、最初の一歩は、査定である。複数社に依頼すると、価格の幅や、担当者の対応を比較できる。

    注意が3つある。

    • 査定は、売却を決める前でも依頼できる。 査定を取ったからといって、売る義務は生じない。
    • 相手の名義の家を、相手に無断で査定に出さない。 査定の申し込みは、所有者(名義人)またはそのご親族を対象にしているサービスが多い。
    • 対象エリアが決まっているサービスがある。 申し込み前に、公式サイトで確認すること。

    5. 相談先

    • 弁護士・法テラス: 財産分与の対象、評価の考え方、連帯債務・連帯保証の整理。
    • ローンを借りている金融機関: 借り換え、名義変更、連帯保証の解除の可否。
    • 不動産会社(複数): 査定、売却の方法、期間の見込み。
    • 司法書士: 登記(名義変更)の手続き。

    まとめ

    • 離婚しても、住宅ローンの返済義務は、自動では消えない。連帯債務・連帯保証の責任も残る。
    • まず、名義・ローン残高・家の価値の3つを確認する。
    • 売却額がローン残高を下回る(オーバーローン)と、売却に不足分の用意が必要になる。
    • 選択肢は、売却・一方が住み続ける・賃貸・現状維持の4つ。それぞれ注意点がある。
    • 査定は、売却を決める前でも取れる。ただし、名義人本人(またはご親族)の依頼が前提のサービスが多い。

    ※本記事は一般的な情報であり、個別の事案への助言ではありません。この記事は、監修者の阿部泰尚が内容を確認しています(監修範囲は監修者紹介をご覧ください)。

  • 離婚とお金|財産分与・年金分割の請求期限は「5年」になっている

    「離婚から2年」と思い込んでいる人が多い

    財産分与も年金分割も、離婚から2年を過ぎると請求できなくなる。長く、そう説明されてきた。

    ところが、現行の条文を確認すると、この数字は変わっている。

    • 財産分与:家庭裁判所に分与を求められる期間は、離婚の時から5年(民法768条2項)
    • 年金分割:標準報酬の改定を請求できる期間は、離婚等をしたときから5年(厚生年金保険法78条の2第1項ただし書)

    古い情報を信じて「もう2年過ぎたから無理だ」と諦めた人がいるかもしれない。逆に、「まだ時間がある」と思い込んで、手続きを先延ばしにする人もいるだろう。いずれにせよ、お金の話は、現行の条文から確認する必要がある。

    本記事では、離婚前後のお金の基本を、条文を基に整理する。

    出典: 民法(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)、厚生年金保険法(同 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115)。2026年10月14日確認。
    離婚の時期によって、改正前の取り扱いが残る場合(経過措置)がある。ご自身の離婚が改正の前か後かで扱いが変わる可能性があるため、請求前に、家庭裁判所・年金事務所・弁護士に必ず確認してほしい。

    1. 財産分与とは何か

    財産分与とは、離婚した夫婦の一方が、相手に財産の分与を請求できる制度である(民法768条1項)。

    話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に「協議に代わる処分」を請求できる。ただし、離婚の時から5年を過ぎると、この請求はできない(同条2項)。

    分け方の考え方

    家庭裁判所は、次のような事情を考慮して、分与するかどうか、額と方法を決める(同条3項)。

    • 婚姻中に取得・維持した財産の額
    • それぞれの寄与の程度
    • 婚姻の期間、婚姻中の生活水準
    • 婚姻中の協力・扶助の状況
    • 年齢、心身の状況、職業、収入

    そして、条文には次の一文がある。寄与の程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。

    つまり、「どちらが稼いだか」ではなく、特段の事情がなければ、寄与は同じと扱う。専業主婦(主夫)であっても、この原則から外れるわけではない。

    対象になりやすい財産

    • 預貯金、保険の解約返戻金
    • 不動産(自宅など)、自動車
    • 株式、退職金など

    名義が一方になっていても、婚姻中に築いた財産であれば対象になり得る。何がどこにあるのかを把握していないと、請求しようがない。 離婚を考え始めたら、まず財産の全体像をつかむことが先になる。

    持ち家がある場合の注意

    住宅ローンが残る自宅は、売却するのか、どちらかが住み続けるのかで、手続きが大きく変わる。ローンの残高と売却見込み額を把握しないまま話を進めると、後から困ることが多い。

    不動産の売却を検討する場合の査定は、無料で複数社に依頼できるサービスもある。ただし、売却の目的を問われることや、名義人本人またはその親族でないと対応できないケースがある点に注意したい。

    2. 年金分割とは何か

    年金分割とは、離婚したときに、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)を、夫婦で分け合う制度である。老後に受け取る年金額に関わる。

    現行の厚生年金保険法では、請求できる期間は離婚等をしたときから5年である(78条の2第1項ただし書)。

    手続きの前提

    分割の割合は、当事者の合意か、家庭裁判所が定める。割合が決まったうえで、年金事務所に標準報酬改定請求を行う流れになる。

    「合意分割」と「3号分割」など、制度の種類や必要書類が異なる。窓口は年金事務所なので、離婚が決まったら早めに相談しておくとよい。

    3. 別居中・離婚前のお金:婚姻費用

    離婚が成立するまでは、夫婦はなお夫婦である。民法760条は、夫婦は「その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定めている。

    別居していても、収入の少ない側が、多い側に生活費(婚姻費用)を求められることがある。金額は、双方の収入などを基に家庭裁判所の算定表で目安が示される。

    離婚を考え始めて別居を始める際は、別居後の生活費をどうするかを先に決めておかないと、生活が立ちゆかなくなる。

    4. 子どもがいる場合:養育費

    子どもがいる場合、離婚の際には、監護者、面会交流、子の監護に要する費用(養育費)の分担などを協議で定める(民法766条1項)。協議が調わないときは、家庭裁判所が定める(同条2項)。

    「取り決めなしの離婚」への備え

    現行の民法には、法定養育費の制度がある(766条の3)。養育費の取り決めをせずに協議離婚した場合、離婚時から子を主に監護している側が、他方に、法務省令で定める額を請求できる。支払い能力がない場合などの例外もある。

    とはいえ、制度に頼るより、離婚時に具体的な金額と支払い方法を書面で取り決めておくほうが、確実である。

    親権

    離婚の際は、父母の協議で、双方または一方を親権者と定める(民法819条1項)。現行の条文では、父母の双方を親権者と定めることも可能になっている。ただし、暴力のおそれがあるなど、共同して親権を行うことが困難な場合は、一方を親権者と定めなければならない(同条7項)。

    詳しくは、別の記事(離婚と子ども)で解説する予定である。

    5. 離婚前にやっておきたいお金の整理

    1. 家計と財産の把握:預貯金、保険、不動産、ローン、借入金。通帳のコピー、保険証券、ローン残高の書類を集める。
    2. 収入と支出の見える化:別居後の生活費を見積もる。
    3. 保険の確認:加入している保険の内容と、名義・受取人を確認する。見直しの相談を無料で受けられるサービスもある。
    4. 公的な窓口で相談:法律の判断が必要な部分は、弁護士や法テラスに相談する。

    6. 相談先

    • 法テラス(日本司法支援センター):法的トラブルの相談窓口の案内、要件を満たす場合の費用立替制度など。
    • 各地の弁護士会の相談窓口:離婚、財産分与の相談。
    • 家庭裁判所:調停の申立てなど。手続きの案内も受けられる。
    • 年金事務所:年金分割の相談と請求。

    このサイトでは、個別の事案に法的な助言をすることはできない。具体的な判断が必要なときは、上記の窓口を利用してほしい。

    まとめ

    • 財産分与の請求期間は、離婚の時から5年(民法768条2項)。
    • 年金分割の請求期間は、離婚等をしたときから5年(厚生年金保険法78条の2第1項ただし書)。
    • 寄与の程度が異なることが明らかでなければ、等しいものとして扱われる。
    • 別居中は婚姻費用、子どもがいれば養育費を、先に整理しておく。
    • 何がどこにあるのかを把握しておくことが、最初の一歩になる。

    ※本記事は一般的な情報であり、個別の事案への助言ではありません。この記事は、監修者の阿部泰尚が内容を確認しています(監修範囲は監修者紹介をご覧ください)。