「受取人」は、契約者の通知だけで変えられる
生命保険の保険金を誰が受け取るかは、保険の契約者が決める。そして、受取人の変更は、契約者が保険会社に意思表示をするだけでできる(保険法43条)。保険事故(死亡など)が起きる前であれば、受取人の同意は要らない。
ただし、死亡保険の場合は、被保険者の同意がなければ変更は効力を生じない(同45条)。
つまり、保険には「契約者」「被保険者」「受取人」という3つの役割があり、誰がどの役割かによって、できることが変わる。ところが、夫婦のどちらかが保険に加入していても、自分の保険の契約者が誰か、受取人が誰かを、正確に説明できない人は少なくない。
保険の見直しは、「保険料を下げる」前に、今の契約の中身を知ることから始まる。
出典: 保険法(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/420AC0000000056)。2026年10月15日確認。
1. まず、保険証券で確認する5項目
保険証券(または契約内容のお知らせ)を、夫婦それぞれの分、すべて集めてほしい。見るのは次の5項目である。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 契約者 | 保険料を払い、契約を変更・解約できる人は誰か |
| 被保険者 | 保障の対象になっている人は誰か |
| 受取人 | 保険金・給付金を受け取る人は誰か(死亡保険金と、入院給付金などでは異なることがある) |
| 保障の内容と期間 | 何に備える保険か。いつまで保障されるか |
| 保険料と払込期間 | 毎月(毎年)いくらか。いつまで払うか |
紙の証券が見つからないときは、保険会社のマイページや、問い合わせ窓口で、契約内容を確認できる。
2. 夫婦で見る「過不足」の考え方
保障が足りないことも、多すぎることも、どちらも家計に影響する。次の視点で見てほしい。
- 万一のとき(死亡): 残された家族の生活費、住居費、子どもの教育費をどう賄うか。必要な額は、家族構成・収入・貯蓄・住宅ローンの有無で大きく変わる。
- 病気・けが(医療): 日本には公的医療保険があり、医療費が高額になった場合の負担を抑える高額療養費制度もある。民間の医療保険は、そのうえで上乗せしたい部分に備えるものである。
- 働けなくなったとき: 収入が途絶えるリスクは、保険だけでなく、貯蓄や勤務先の制度でも備えられる。
- 教育費: 学資保険のほか、貯蓄や家計全体の中で準備する選択肢もある。
「必要な額」は、一般的な金額が決まっているわけではない。自分の家庭の数字で考える必要がある。夫婦の家計の全体像は、家計健康度チェックでも確認できる。
3. 見直しの順番
- 現状把握: 上の5項目を、全契約について一覧にする。
- 必要性の確認: 今の家族構成・収入・貯蓄で、何に備えるべきかを書き出す。
- 重複の確認: 同じ内容の保障が、複数の契約に重なっていないか確認する。
- 変更の影響の確認: 解約や減額の前に、必ず次を確認する。
– 解約返戻金の有無と額
– 解約後に再加入できるか(年齢・健康状態で入れない場合がある)
– 保険料が上がらないか(年齢が上がった後の再加入は、保険料が高くなることが多い)
解約は、取り消せない。 家計が苦しいときほど、急いで解約したくなるが、まず上の確認を済ませてほしい。
4. 相談窓口の使い方
保険の見直しの相談は、無料で受けられる窓口がある。複数の保険会社の商品を扱う窓口なら、比較の視点で話を聞ける。
使うときに、知っておきたいことが3つある。
- 窓口は、保険会社から手数料を受け取る仕組みが一般的である。 提案が、必ずしも家庭にとって最適とは限らない。提案の理由を聞き、複数の提案を比べること。
- 加入を急かされたら、その場で決めない。 持ち帰って、夫婦で相談してよい。
- 現在の保険の内容を、先に整理しておく。 上の5項目を持って相談に行くと、話が早い。
相談サービスの多くは、収入のある方を対象にしている。条件は、申し込み前に公式サイトで確認してほしい。
5. 離婚や別居を考えているときの注意
離婚や別居を考えている場合は、保険の扱いに、さらに注意が必要である。
- 勝手な解約や、受取人の変更は避ける。 契約者が単独でできる場合でも、話し合いの途中で一方的に行うと、後でトラブルになりやすい。
- 解約返戻金のある保険は、財産分与の対象になり得る。 詳しくは、別の記事(離婚前に見直したい保険の名義・受取人)で解説する予定である。
- 名義や受取人を変える手続きは、保険会社が決めている。 必ず、保険会社に確認してから進めること。
財産分与や年金分割の期限など、離婚時のお金の基本は、離婚とお金の記事で整理している。
まとめ
- 保険には、契約者・被保険者・受取人の3つの役割がある。
- 受取人の変更は、契約者が保険会社に意思表示するだけでできる(保険法43条)。ただし、死亡保険は被保険者の同意が必要(同45条)。
- 見直しは、証券の5項目を一覧にすることから始める。
- 解約や減額の前に、解約返戻金・再加入の可否・保険料の変化を確認する。
- 相談窓口は、手数料の仕組みを知ったうえで使い、急かされても、その場で決めない。
※本記事は一般的な情報であり、個別の保険商品を推奨するものではありません。この記事は、監修者の阿部泰尚が内容を確認しています(監修範囲は監修者紹介をご覧ください)。