離婚とお金|財産分与・年金分割の請求期限は「5年」になっている

監修:阿部泰尚

「離婚から2年」と思い込んでいる人が多い

財産分与も年金分割も、離婚から2年を過ぎると請求できなくなる。長く、そう説明されてきた。

ところが、現行の条文を確認すると、この数字は変わっている。

  • 財産分与:家庭裁判所に分与を求められる期間は、離婚の時から5年(民法768条2項)
  • 年金分割:標準報酬の改定を請求できる期間は、離婚等をしたときから5年(厚生年金保険法78条の2第1項ただし書)

古い情報を信じて「もう2年過ぎたから無理だ」と諦めた人がいるかもしれない。逆に、「まだ時間がある」と思い込んで、手続きを先延ばしにする人もいるだろう。いずれにせよ、お金の話は、現行の条文から確認する必要がある。

本記事では、離婚前後のお金の基本を、条文を基に整理する。

出典: 民法(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)、厚生年金保険法(同 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115)。2026年10月14日確認。
離婚の時期によって、改正前の取り扱いが残る場合(経過措置)がある。ご自身の離婚が改正の前か後かで扱いが変わる可能性があるため、請求前に、家庭裁判所・年金事務所・弁護士に必ず確認してほしい。

1. 財産分与とは何か

財産分与とは、離婚した夫婦の一方が、相手に財産の分与を請求できる制度である(民法768条1項)。

話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に「協議に代わる処分」を請求できる。ただし、離婚の時から5年を過ぎると、この請求はできない(同条2項)。

分け方の考え方

家庭裁判所は、次のような事情を考慮して、分与するかどうか、額と方法を決める(同条3項)。

  • 婚姻中に取得・維持した財産の額
  • それぞれの寄与の程度
  • 婚姻の期間、婚姻中の生活水準
  • 婚姻中の協力・扶助の状況
  • 年齢、心身の状況、職業、収入

そして、条文には次の一文がある。寄与の程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。

つまり、「どちらが稼いだか」ではなく、特段の事情がなければ、寄与は同じと扱う。専業主婦(主夫)であっても、この原則から外れるわけではない。

対象になりやすい財産

  • 預貯金、保険の解約返戻金
  • 不動産(自宅など)、自動車
  • 株式、退職金など

名義が一方になっていても、婚姻中に築いた財産であれば対象になり得る。何がどこにあるのかを把握していないと、請求しようがない。 離婚を考え始めたら、まず財産の全体像をつかむことが先になる。

持ち家がある場合の注意

住宅ローンが残る自宅は、売却するのか、どちらかが住み続けるのかで、手続きが大きく変わる。ローンの残高と売却見込み額を把握しないまま話を進めると、後から困ることが多い。

不動産の売却を検討する場合の査定は、無料で複数社に依頼できるサービスもある。ただし、売却の目的を問われることや、名義人本人またはその親族でないと対応できないケースがある点に注意したい。

2. 年金分割とは何か

年金分割とは、離婚したときに、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)を、夫婦で分け合う制度である。老後に受け取る年金額に関わる。

現行の厚生年金保険法では、請求できる期間は離婚等をしたときから5年である(78条の2第1項ただし書)。

手続きの前提

分割の割合は、当事者の合意か、家庭裁判所が定める。割合が決まったうえで、年金事務所に標準報酬改定請求を行う流れになる。

「合意分割」と「3号分割」など、制度の種類や必要書類が異なる。窓口は年金事務所なので、離婚が決まったら早めに相談しておくとよい。

3. 別居中・離婚前のお金:婚姻費用

離婚が成立するまでは、夫婦はなお夫婦である。民法760条は、夫婦は「その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定めている。

別居していても、収入の少ない側が、多い側に生活費(婚姻費用)を求められることがある。金額は、双方の収入などを基に家庭裁判所の算定表で目安が示される。

離婚を考え始めて別居を始める際は、別居後の生活費をどうするかを先に決めておかないと、生活が立ちゆかなくなる。

4. 子どもがいる場合:養育費

子どもがいる場合、離婚の際には、監護者、面会交流、子の監護に要する費用(養育費)の分担などを協議で定める(民法766条1項)。協議が調わないときは、家庭裁判所が定める(同条2項)。

「取り決めなしの離婚」への備え

現行の民法には、法定養育費の制度がある(766条の3)。養育費の取り決めをせずに協議離婚した場合、離婚時から子を主に監護している側が、他方に、法務省令で定める額を請求できる。支払い能力がない場合などの例外もある。

とはいえ、制度に頼るより、離婚時に具体的な金額と支払い方法を書面で取り決めておくほうが、確実である。

親権

離婚の際は、父母の協議で、双方または一方を親権者と定める(民法819条1項)。現行の条文では、父母の双方を親権者と定めることも可能になっている。ただし、暴力のおそれがあるなど、共同して親権を行うことが困難な場合は、一方を親権者と定めなければならない(同条7項)。

詳しくは、別の記事(離婚と子ども)で解説する予定である。

5. 離婚前にやっておきたいお金の整理

  1. 家計と財産の把握:預貯金、保険、不動産、ローン、借入金。通帳のコピー、保険証券、ローン残高の書類を集める。
  2. 収入と支出の見える化:別居後の生活費を見積もる。
  3. 保険の確認:加入している保険の内容と、名義・受取人を確認する。見直しの相談を無料で受けられるサービスもある。
  4. 公的な窓口で相談:法律の判断が必要な部分は、弁護士や法テラスに相談する。

6. 相談先

  • 法テラス(日本司法支援センター):法的トラブルの相談窓口の案内、要件を満たす場合の費用立替制度など。
  • 各地の弁護士会の相談窓口:離婚、財産分与の相談。
  • 家庭裁判所:調停の申立てなど。手続きの案内も受けられる。
  • 年金事務所:年金分割の相談と請求。

このサイトでは、個別の事案に法的な助言をすることはできない。具体的な判断が必要なときは、上記の窓口を利用してほしい。

まとめ

  • 財産分与の請求期間は、離婚の時から5年(民法768条2項)。
  • 年金分割の請求期間は、離婚等をしたときから5年(厚生年金保険法78条の2第1項ただし書)。
  • 寄与の程度が異なることが明らかでなければ、等しいものとして扱われる。
  • 別居中は婚姻費用、子どもがいれば養育費を、先に整理しておく。
  • 何がどこにあるのかを把握しておくことが、最初の一歩になる。

※本記事は一般的な情報であり、個別の事案への助言ではありません。この記事は、監修者の阿部泰尚が内容を確認しています(監修範囲は監修者紹介をご覧ください)。

監修者について

阿部泰尚(合名会社T.I.U.代表。探偵業・いじめ問題の相談の現場の経験を基に、内容が読者の実情から外れていないかを確認しています。法律・税金・保険・年金の個別の判断は、弁護士や税理士など、専門家にご相談ください。)

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