離婚しても、住宅ローンの返済義務は自動では消えない
離婚して、夫婦の関係が終わっても、金融機関との住宅ローンの契約は、そのまま続く。
ローンの名義が夫のみなら、離婚後も返済義務は夫にある。夫婦で連帯債務にしていたり、一方が連帯保証人になっていたりすれば、離婚しても、その責任は残る。「家は妻が住み続けて、ローンは夫が払う」と話し合いで決めても、金融機関に対しては、契約どおりの責任が続く。
離婚の話し合いで、いちばん揉めやすく、後から困りやすいのが、住宅ローンが残る家の扱いである。
1. まず確認する3つの数字と書類
| 確認すること | 見る書類 |
|---|---|
| 家の名義(誰の持ち物か)と、抵当権の設定 | 登記事項証明書(法務局で取得できる) |
| ローンの残高、返済額、名義人(連帯債務・連帯保証を含む) | ローンの返済予定表、残高証明書、契約書 |
| 家の価値(いくらで売れそうか) | 不動産会社の査定書 |
家の価値からローンの残高を引いた額が、実質的な財産になる。
- 売却額 > ローン残高:アンダーローン。差額が手元に残る。
- 売却額 < ローン残高:オーバーローン。差額を、自己資金などで返済しないと、抵当権を外して売ることが難しい。
財産分与で分けるのは、家そのものではなく、ローンを差し引いた後の価値である(婚姻中に築いた財産として、民法768条3項に基づき、寄与の程度などを考慮して定められる)。
2. 4つの選択肢
① 売却して、ローンを清算する
家を売って、ローンを返済し、残ったお金を分ける方法である。
- 利点:ローンの責任から解放される。分け方が明確。
- 注意点:オーバーローンだと、不足分の用意が必要。売却に時間がかかることがある。
② 一方が住み続ける
どちらかが、そのまま住み続ける方法である。
- 利点:子どもの転校・転居を避けられる。
- 注意点:ローンの名義人と、住む人が違うと、トラブルになりやすい。名義人が払えなくなると、住み続けることが難しくなる。ローンの借り換え・名義変更・連帯保証の解除は、金融機関の承諾が必要で、収入や審査の結果で認められないことがある。
③ 賃貸に出す
住まずに、貸して家賃でローンを返す方法である。
- 注意点:住宅ローンは、居住用を前提にした契約が多く、契約で賃貸が制限されている場合がある。金融機関への確認が必要。
④ 当面は現状を維持する
離婚後も、しばらくそのままにする方法である。
- 注意点:問題を先送りにするだけで、共有名義のままだと、後から売却や処分に双方の同意が必要になる。
3. 話し合いの前に、整理しておくこと
- 家の名義と、ローンの名義人・連帯保証人を確認する
- ローンの残高と、毎月の返済額を確認する
- 複数の不動産会社に、査定を依頼して、価値を知る
- 頭金に、親からの援助など、一方の特有の資金が入っていないか確認する
- 離婚後に、誰がどこに住むのか、子どもの学校や通勤を踏まえて考える
- 別居後の生活費と、ローンの返済を、どう負担するかを決める
4. 査定を取るときの注意
売却を検討するときの、最初の一歩は、査定である。複数社に依頼すると、価格の幅や、担当者の対応を比較できる。
注意が3つある。
- 査定は、売却を決める前でも依頼できる。 査定を取ったからといって、売る義務は生じない。
- 相手の名義の家を、相手に無断で査定に出さない。 査定の申し込みは、所有者(名義人)またはそのご親族を対象にしているサービスが多い。
- 対象エリアが決まっているサービスがある。 申し込み前に、公式サイトで確認すること。
5. 相談先
- 弁護士・法テラス: 財産分与の対象、評価の考え方、連帯債務・連帯保証の整理。
- ローンを借りている金融機関: 借り換え、名義変更、連帯保証の解除の可否。
- 不動産会社(複数): 査定、売却の方法、期間の見込み。
- 司法書士: 登記(名義変更)の手続き。
まとめ
- 離婚しても、住宅ローンの返済義務は、自動では消えない。連帯債務・連帯保証の責任も残る。
- まず、名義・ローン残高・家の価値の3つを確認する。
- 売却額がローン残高を下回る(オーバーローン)と、売却に不足分の用意が必要になる。
- 選択肢は、売却・一方が住み続ける・賃貸・現状維持の4つ。それぞれ注意点がある。
- 査定は、売却を決める前でも取れる。ただし、名義人本人(またはご親族)の依頼が前提のサービスが多い。
※本記事は一般的な情報であり、個別の事案への助言ではありません。この記事は、監修者の阿部泰尚が内容を確認しています(監修範囲は監修者紹介をご覧ください)。