カテゴリー: 離婚と子ども

  • 親権とは?共同親権で変わったことと、変わらないこと【2026年4月施行】

    離婚後も「父母の双方が親権者」になれる時代になった

    2026年4月1日から、離婚した後も、父母の双方を親権者とすることができるようになった。それまでの日本では、離婚後の親権は、父母のどちらか一方だけが持つ「単独親権」しか選べなかった。

    ただし、誤解しやすい点がある。共同親権が原則になったわけではない。 父母の双方を親権者とするか、一方だけにするかは、協議または裁判所の判断で決まり、状況によっては、必ず単独親権としなければならない場合もある。

    この記事では、現行の民法の条文を基に、何が変わり、何が変わらないのかを整理する。

    出典: 民法(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)、法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00357.html)。2026年10月15日確認。

    1. 親権とは何か

    親権は、成年に達しない子について、その子の利益のために行使しなければならない権利であり、義務でもある(民法818条1項)。婚姻中は、父母の双方が親権者である(同条2項)。

    親権には、大きく2つの内容がある。

    • 子を監護し、教育すること(身の回りの世話、しつけ、教育の方針など)
    • 子の財産を管理すること

    離婚すると、婚姻中の「双方が親権者」という状態を、どう扱うかを決める必要が出てくる。

    2. 離婚の際の決め方:何が変わったか

    現行の民法819条は、離婚の際の親権者を、次のように定めている。

    • 協議離婚のとき: 父母の協議で、その双方または一方を親権者と定める(819条1項)。
    • 協議が調わないとき: 家庭裁判所が、父または母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる(同条5項)。
    • 裁判上の離婚のとき: 裁判所が、父母の双方または一方を親権者と定める(同条2項)。

    つまり、これまでは「一方だけ」だった選択肢に、「双方」が加わった。

    双方を親権者とするか、裁判所はどう判断するか

    裁判所は、父母の双方を親権者とするか、一方とするかを判断する際に、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係、その他一切の事情を考慮しなければならない(同条7項)。

    そして、次のいずれかに当たる場合は、父母の一方を親権者と定めなければならない(同項)。

    1. 父または母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。
    2. 父母の一方が他方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(DVなど)を受けるおそれの有無、協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。

    DVや虐待のおそれがある場合に、共同親権を強いられることはない。

    3. 共同親権のとき、親権はどう行使するのか

    父母の双方が親権者であるとき、親権は、父母が共同して行うのが原則である(824条の2第1項)。

    ただし、次の場合は、一方が単独で行うことができる(同項ただし書)。

    • 一方のみが親権者であるとき。
    • 他方が親権を行うことができないとき。
    • 子の利益のため急迫の事情があるとき。

    また、双方が親権者であっても、監護および教育に関する日常の行為は、単独で行うことができる(同条2項)。毎日の世話や、日々の生活のなかの判断まで、いちいち相手の同意が要るわけではない。

    特定の重要な事項について、父母の間で協議が調わない場合は、子の利益のために必要があると認めるときに、家庭裁判所が、一方が単独で行うことができる旨を定めることができる(同条3項)。

    何が「日常の行為」で、何が「重要な事項」に当たるかは、具体的な事案によって判断される。法務省は、具体例を挙げたQ&A形式の解説資料を公表している。

    4. すでに離婚している場合

    2026年4月1日より前に離婚し、単独親権になっている場合、施行によって自動的に共同親権に変わることはない。

    ただし、施行後は、すでに離婚している父母も、家庭裁判所に親権者の変更を申し立てることができ、父母の双方を親権者とする変更も、申立ての対象になる。裁判所は、子の利益のため、父母と子との関係や、父と母との関係、その他一切の事情を考慮して判断する。

    DVなどがあって、父母が共同して親権を行うことが困難な場合は、共同親権への変更は認められない。

    5. 親権を考えるときの視点

    親権は、「どちらが勝つか」という問題ではない。民法は、子の利益を最優先にするよう定めている(766条1項、818条1項、819条7項)。父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならないとも定められている(817条の12第2項)。

    考える材料として、次の点を整理しておくとよい。

    • 子の生活: 今の学校・園、友人関係、生活リズム。それをどこまで維持できるか。
    • 子の意思: 年齢に応じて、子の気持ちをどう受け止めるか。
    • 父母の関係: 重要な事項について、冷静に協議できる関係が保てるか。
    • 安全: DVや虐待のおそれがないか。ある場合は、安全の確保が最優先であり、まず公的な窓口に相談する。
    • 離婚後の暮らし: 居住地、仕事、養育費、親子の交流(面会交流)をどうするか。

    養育費と親権は別の問題である。養育費は、親権の有無にかかわらず、子を監護していない親も負う義務である(養育費は別の記事で整理している)。

    6. 相談先

    • 家庭裁判所: 親権者の指定・変更の調停、手続きの案内。
    • 弁護士・法テラス: 個別の事案の整理、見通し、手続き。
    • お住まいの自治体の相談窓口: ひとり親支援、子育て支援。
    • DVや虐待が疑われる場合: 警察(110番)、DV相談プラス(0120-279-889、24時間)、児童相談所。

    総合診断で、どのテーマから読むとよいかを確認することもできる。→ 夫婦関係診断(総合) / 子どもについての考えの整理には 子どもへの影響・親権準備度

    まとめ

    • 2026年4月1日から、離婚後も、父母の双方を親権者とすることができる。ただし、共同親権が原則になったわけではない。
    • 協議で決まらなければ、家庭裁判所が、子の利益を基準に判断する。DV・虐待のおそれなどの場合は、必ず一方を親権者とする。
    • 共同親権でも、日常の行為は単独でできる。急迫の事情があるときも単独でできる。
    • すでに離婚している場合は、自動では変わらない。家庭裁判所への親権者変更の申立てが必要。

    ※本記事は一般的な情報であり、個別の事案への助言ではありません。この記事は、監修者の阿部泰尚が内容を確認しています(監修範囲は監修者紹介をご覧ください)。

  • 養育費の決め方と法定養育費|取り決めなしでも月2万円×子の数を請求できる(2026年4月以降の離婚)

    取り決めなしで離婚しても、月2万円×子の数を請求できる

    2026年4月1日以降に離婚した場合、養育費の取り決めをしていなくても、子を主に監護している親は、もう一方の親に、子ひとりにつき月額2万円を請求できる。これが法定養育費である。

    ただし、重要な注意がある。2万円は、養育費の標準額ではない。 取り決めができるまでの、暫定的・補充的な制度である。適切な額は、親の収入や子の人数・年齢などによって個別に決まる。

    この記事では、養育費の基本と、法定養育費の仕組みを、条文と公的な資料を基に整理する。

    出典: 民法(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)、法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00357.html)、裁判所「養育費請求調停」(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_07/index.html)。2026年10月15日確認。

    1. 養育費の基本

    養育費は、子が自立するまでに必要な、監護に要する費用である。父母が協議上の離婚をするときは、子の監護に要する費用の分担を、協議で定める(民法766条1項)。そのとき、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

    協議が調わないとき、または協議ができないときは、家庭裁判所が定める(同条2項)。

    養育費は、親権の有無とは別の問題である。子を監護していない親も、子の親としての義務を負う。

    2. 養育費の決め方:4つの段階

    ① 話し合い(協議)

    まず、父母で、金額・支払う期間・支払い方法・支払日を話し合う。

    ② 書面にする

    口約束で終わらせないことが重要である。合意の内容は、離婚協議書にまとめる。さらに、公正証書にして、「支払いが滞ったときは、強制執行を受けても異議がない」という旨の文言(強制執行認諾文言)を入れておくと、裁判をしなくても、給与や預貯金の差押えの手続きに進める。

    ③ 調停

    話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てる。調停委員を交えて、話し合いで解決を目指す。

    ④ 審判

    調停で合意に至らなければ、審判に移り、裁判官が、事情を考慮して金額などを決める。

    金額の目安としては、裁判所が公表している養育費の算定表がある。父母の収入や、子の人数・年齢から、目安の範囲が分かる。ただし、算定表は目安であり、個別の事情で調整される。

    3. 法定養育費とは

    制度の内容

    法定養育費は、養育費の取り決めをせずに協議離婚した場合の特例である(民法766条の3)。

    • 請求できる人: 離婚の時から引き続き、子を主として監護している父母の一方。
    • 請求の相手: もう一方の父母。
    • 金額: 法務省令で定める額。子ひとりにつき月額2万円(子の人数を掛けた額)。
    • 請求できる期間: 離婚の日から、次のいずれか早い日まで。

    – 父母が、協議で養育費の分担を定めた日
    – 家庭裁判所の審判が確定した日
    – 子が成年に達した日

    • 支払い: 毎月末。

    支払う側の例外

    支払う側が、支払う能力を欠く場合や、支払うことで生活が著しく窮迫する場合は、そのことを証明すれば、全部または一部の支払いを拒むことができる(同条1項ただし書)。家庭裁判所も、支払い能力を考慮して、支払いの全部・一部の免除や猶予を命じることができる(同条3項)。

    適用される範囲

    法定養育費は、2026年4月1日以降に離婚した場合にのみ発生する。それより前に離婚した場合には、発生しない。

    「2万円」の位置づけ

    2万円は、あくまで暫定的な額である。実際に必要な費用や、父母の収入に見合った金額とは限らない。法定養育費があるからといって、養育費を取り決めなくてよいわけではない。離婚時に、具体的な金額と支払い方法を、書面で決めておくことが、変わらず重要である。

    また、父母の協議で、法定養育費より低い額の養育費を取り決めることもできる。それは、父母の合意の問題であり、その合意に至る過程で、不利な条件を受け入れないよう注意が必要である。

    4. 支払いが止まったとき

    養育費の支払いが滞った場合、状況に応じて、次のような手段がある。

    • 履行勧告・履行命令: 家庭裁判所が、調停・審判で決まった内容を守るよう、働きかける制度。
    • 強制執行(差押え): 給与・預貯金などを差し押さえる手続き。調停調書・審判・公正証書(強制執行認諾文言付き)があれば、利用できる。
    • 財産開示: 相手の財産が分からない場合に、裁判所を通じて調べる手続き。

    さらに、2026年4月以降に生じる養育費については、先取特権の制度が整えられた。法務省令では、先取特権が付与される額が、子ひとりにつき月額8万円までと定められている。これは、法定養育費(2万円)とは別の数字であり、養育費全体の優先的な回収の上限を示すものである。

    具体的な手続きは、事案によって異なる。弁護士や法テラス、家庭裁判所の窓口に相談してほしい。

    5. 養育費を決めるときのチェックリスト

    1. 子の人数・年齢と、毎月の必要額を整理した
    2. 双方の収入(源泉徴収票・確定申告書など)を確認した
    3. 算定表を見て、目安の範囲を確認した
    4. 支払う期間(何歳まで、進学の費用をどうするか)を決めた
    5. 支払い方法(振込先、支払日)を決めた
    6. 病気・進学など、特別な費用の分担を決めた
    7. 公正証書(強制執行認諾文言付き)にするか検討した
    8. 離婚後の連絡手段(住所・連絡先の変更の通知)を決めた

    家計全体の整理は、離婚前の家計・財産チェックでも確認できる。

    まとめ

    • 養育費は、離婚の際に、父母の協議で定める(民法766条)。まとまらなければ、家庭裁判所が定める。
    • 2026年4月1日以降の離婚では、取り決めなしでも、子ひとりにつき月額2万円の法定養育費を請求できる(同766条の3)。ただし、暫定的な額であり、標準額ではない。
    • 支払う側に、支払い能力がない場合などは、支払いを拒める場合がある。
    • 離婚時に、金額と支払い方法を書面(できれば公正証書)で決めておく。
    • 支払いが止まったときは、履行勧告、強制執行、財産開示などの手段がある。

    ※本記事は一般的な情報であり、個別の事案への助言ではありません。この記事は、監修者の阿部泰尚が内容を確認しています(監修範囲は監修者紹介をご覧ください)。