養育費の決め方と法定養育費|取り決めなしでも月2万円×子の数を請求できる(2026年4月以降の離婚)

監修:阿部泰尚

取り決めなしで離婚しても、月2万円×子の数を請求できる

2026年4月1日以降に離婚した場合、養育費の取り決めをしていなくても、子を主に監護している親は、もう一方の親に、子ひとりにつき月額2万円を請求できる。これが法定養育費である。

ただし、重要な注意がある。2万円は、養育費の標準額ではない。 取り決めができるまでの、暫定的・補充的な制度である。適切な額は、親の収入や子の人数・年齢などによって個別に決まる。

この記事では、養育費の基本と、法定養育費の仕組みを、条文と公的な資料を基に整理する。

出典: 民法(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)、法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00357.html)、裁判所「養育費請求調停」(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_07/index.html)。2026年10月15日確認。

1. 養育費の基本

養育費は、子が自立するまでに必要な、監護に要する費用である。父母が協議上の離婚をするときは、子の監護に要する費用の分担を、協議で定める(民法766条1項)。そのとき、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

協議が調わないとき、または協議ができないときは、家庭裁判所が定める(同条2項)。

養育費は、親権の有無とは別の問題である。子を監護していない親も、子の親としての義務を負う。

2. 養育費の決め方:4つの段階

① 話し合い(協議)

まず、父母で、金額・支払う期間・支払い方法・支払日を話し合う。

② 書面にする

口約束で終わらせないことが重要である。合意の内容は、離婚協議書にまとめる。さらに、公正証書にして、「支払いが滞ったときは、強制執行を受けても異議がない」という旨の文言(強制執行認諾文言)を入れておくと、裁判をしなくても、給与や預貯金の差押えの手続きに進める。

③ 調停

話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てる。調停委員を交えて、話し合いで解決を目指す。

④ 審判

調停で合意に至らなければ、審判に移り、裁判官が、事情を考慮して金額などを決める。

金額の目安としては、裁判所が公表している養育費の算定表がある。父母の収入や、子の人数・年齢から、目安の範囲が分かる。ただし、算定表は目安であり、個別の事情で調整される。

3. 法定養育費とは

制度の内容

法定養育費は、養育費の取り決めをせずに協議離婚した場合の特例である(民法766条の3)。

  • 請求できる人: 離婚の時から引き続き、子を主として監護している父母の一方。
  • 請求の相手: もう一方の父母。
  • 金額: 法務省令で定める額。子ひとりにつき月額2万円(子の人数を掛けた額)。
  • 請求できる期間: 離婚の日から、次のいずれか早い日まで。

– 父母が、協議で養育費の分担を定めた日
– 家庭裁判所の審判が確定した日
– 子が成年に達した日

  • 支払い: 毎月末。

支払う側の例外

支払う側が、支払う能力を欠く場合や、支払うことで生活が著しく窮迫する場合は、そのことを証明すれば、全部または一部の支払いを拒むことができる(同条1項ただし書)。家庭裁判所も、支払い能力を考慮して、支払いの全部・一部の免除や猶予を命じることができる(同条3項)。

適用される範囲

法定養育費は、2026年4月1日以降に離婚した場合にのみ発生する。それより前に離婚した場合には、発生しない。

「2万円」の位置づけ

2万円は、あくまで暫定的な額である。実際に必要な費用や、父母の収入に見合った金額とは限らない。法定養育費があるからといって、養育費を取り決めなくてよいわけではない。離婚時に、具体的な金額と支払い方法を、書面で決めておくことが、変わらず重要である。

また、父母の協議で、法定養育費より低い額の養育費を取り決めることもできる。それは、父母の合意の問題であり、その合意に至る過程で、不利な条件を受け入れないよう注意が必要である。

4. 支払いが止まったとき

養育費の支払いが滞った場合、状況に応じて、次のような手段がある。

  • 履行勧告・履行命令: 家庭裁判所が、調停・審判で決まった内容を守るよう、働きかける制度。
  • 強制執行(差押え): 給与・預貯金などを差し押さえる手続き。調停調書・審判・公正証書(強制執行認諾文言付き)があれば、利用できる。
  • 財産開示: 相手の財産が分からない場合に、裁判所を通じて調べる手続き。

さらに、2026年4月以降に生じる養育費については、先取特権の制度が整えられた。法務省令では、先取特権が付与される額が、子ひとりにつき月額8万円までと定められている。これは、法定養育費(2万円)とは別の数字であり、養育費全体の優先的な回収の上限を示すものである。

具体的な手続きは、事案によって異なる。弁護士や法テラス、家庭裁判所の窓口に相談してほしい。

5. 養育費を決めるときのチェックリスト

  1. 子の人数・年齢と、毎月の必要額を整理した
  2. 双方の収入(源泉徴収票・確定申告書など)を確認した
  3. 算定表を見て、目安の範囲を確認した
  4. 支払う期間(何歳まで、進学の費用をどうするか)を決めた
  5. 支払い方法(振込先、支払日)を決めた
  6. 病気・進学など、特別な費用の分担を決めた
  7. 公正証書(強制執行認諾文言付き)にするか検討した
  8. 離婚後の連絡手段(住所・連絡先の変更の通知)を決めた

家計全体の整理は、離婚前の家計・財産チェックでも確認できる。

まとめ

  • 養育費は、離婚の際に、父母の協議で定める(民法766条)。まとまらなければ、家庭裁判所が定める。
  • 2026年4月1日以降の離婚では、取り決めなしでも、子ひとりにつき月額2万円の法定養育費を請求できる(同766条の3)。ただし、暫定的な額であり、標準額ではない。
  • 支払う側に、支払い能力がない場合などは、支払いを拒める場合がある。
  • 離婚時に、金額と支払い方法を書面(できれば公正証書)で決めておく。
  • 支払いが止まったときは、履行勧告、強制執行、財産開示などの手段がある。

※本記事は一般的な情報であり、個別の事案への助言ではありません。この記事は、監修者の阿部泰尚が内容を確認しています(監修範囲は監修者紹介をご覧ください)。

監修者について

阿部泰尚(合名会社T.I.U.代表。探偵業・いじめ問題の相談の現場の経験を基に、内容が読者の実情から外れていないかを確認しています。法律・税金・保険・年金の個別の判断は、弁護士や税理士など、専門家にご相談ください。)

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