「ワンオペ」は、気持ちの弱さではなく、構造の問題である
仕事や、家庭の事情で、ほとんどの育児と家事を、一人で担う。いわゆる「ワンオペ育児」である。
疲れて当たり前の状況である。にもかかわらず、多くの人は、「自分の努力が足りない」「みんなやっている」と、自分を責める。しかし、一人で担う量が、一人の限界を超えているなら、それは、気持ちの強さの問題ではない。分担と支援の仕組みの問題である。
この記事では、夫婦で話し合うことと、夫婦の外にある支援を、整理する。
1. 限界のサイン
次のようなサインが続くときは、休むことと、助けを求めることを、最優先にしてほしい。
- 眠れない、または寝ても疲れがとれない状態が、続いている。
- 食欲がない、または食べ過ぎてしまう。
- 子どもに対して、強いいらだちを感じる。手が出そうになる。
- 何をしても楽しくない。涙が止まらない。
- 自分は、いない方がよいと考えてしまう。
身体や心の不調が続く場合は、医療機関(精神科・心療内科、産婦人科)に相談することをおすすめする。子どもへの暴力を止められないと感じたとき、または、死にたいと思うほど追い詰められたときは、すぐに、次の窓口に連絡してほしい。
- 緊急のとき: 警察(110番)、救急(119番)
- よりそいホットライン: 0120-279-338(24時間)
- 児童相談所 全国共通ダイヤル: 189(いちはやく)
連絡先は変更されることがある。利用前に、公的な案内で確認してほしい。
2. 夫婦で、話すこと
「できていない」のではなく、「量が多すぎる」と伝える
話し合いの入り口は、責めることではなく、事実の共有である。「あなたは、何もしていない」ではなく、「1日に、これだけのことを、私が担っている」と、一覧にして見せる。
「手伝う」ではなく、「共同で担う」
家事・育児は、どちらかの仕事を、もう一方が「手伝う」ものではない。共同で担うものである。「手伝う」という言葉が、すでに、責任の所在を一方に置いている。
具体的に頼む
「もっと協力して」という言い方は、伝わらない。「毎週火曜日と土曜日の夕食後の洗い物と、子どもの入浴を、お願いしたい」のように、いつ・何を・どれくらいを、具体的に伝える。
休む時間を、先に確保する
話し合いの前に、休む時間を、先に決める。たとえば、週に半日、一人で過ごせる時間をつくる。休めていない状態では、冷静な話し合いはできない。
話し合いは、決まった時間に
感情が高ぶった状態の話し合いは、うまくいかない。週に1回、決まった曜日・時間に、短く話す時間を設ける。夜遅くの話し合いは避ける。
3. 相手に頼めない事情があるとき
相手が、長時間労働や単身赴任などで、物理的に、育児に関われないこともある。その場合は、夫婦の話し合いで解決できる範囲に、限りがある。
- 「できない」を、責めずに受け止める。 そのうえで、夫婦以外の支援を、前提にした体制をつくる。
- 相手が関われる別の形(家計の管理、手続き、休日の一部)を、探す。
- 勤務先の制度(時短勤務、休暇、在宅勤務)で、調整できないか、相手に相談してもらう。
4. 夫婦の外にある支援
① 自治体の子育て支援
お住まいの市区町村には、次のような支援がある(内容は自治体によって異なる)。
- こども家庭センター: 妊娠期から子育て期までの、相談窓口。
- 一時預かり: 保護者の用事や、休息のために、子どもを一時的に預かる事業。
- ファミリー・サポート・センター: 子どもを預けたい人と、預かれる人を、つなぐ事業。
- 子育て支援拠点(児童館、地域子育て支援センター): 親子で過ごせる場所と、相談の機会。
② 産後ケア事業
出産後1年を経過しない女性と乳児を対象に、心身のケアや育児の相談、世話をする事業を、市町村が行うよう努めることが、法律で定められている(母子保健法17条の2)。
- 短期間の宿泊型、日帰りの通所型、自宅に来てもらう訪問型がある。
- 利用の条件・料金・対象は、自治体によって異なる。お住まいの市区町村の、母子保健の窓口に確認する。
③ 家事代行・宅配食材などの民間サービス
家事の負担を減らす手段として、検討できる。→ 家事代行は使うべき?
④ 家族・友人・地域のつながり
頼れる人がいる場合は、具体的な日時を決めて、頼む。「困ったら言って」という申し出に、「来週の木曜に、2時間、見てもらえますか」と答える。
5. 「助けを求める」ことは、子どもを守ること
自分一人が限界を超えたまま育児を続けることは、自分にとっても、子どもにとっても、よい状態ではない。助けを求めることは、子どもを守る選択である。
6. 診断で、いまの状況を整理する
家事・育児の偏りを数字で確認できる。パートナーにも同じ質問に答えてもらい、結果を並べて見ることをおすすめする。
まとめ
- ワンオペ育児の疲れは、気持ちの弱さではなく、一人で担う量が多すぎる構造の問題。
- 限界のサイン(不眠、強いいらだち、涙が止まらない)が続くときは、医療機関や公的な窓口に相談する。
- 夫婦の話し合いは、責めずに事実を共有し、具体的に頼む。先に、休む時間を確保する。
- 夫婦以外の支援(こども家庭センター、一時預かり、ファミリー・サポート、産後ケア事業)を、使う。
※本記事は一般的な情報であり、個別の事案への助言・医療上の診断ではありません。この記事は、監修者の阿部泰尚が内容を確認しています(監修範囲は監修者紹介をご覧ください)。