「私ばかりがやっている」は、ほとんどの場合、お互いに同じことを思っている
家事と育児の分担をめぐる夫婦の言い争いには、共通した形がある。
「私ばかりが、やっている」と、一方が言う。「自分もやっている」と、もう一方が答える。どちらも、嘘は言っていない。 見えている範囲が違うだけである。
自分がやっていることは、手間も時間も、よく見える。相手がやっていることは、見えにくい。とくに、子どもの予定を把握し、持ち物を準備し、必要な手続きを思い出すという、頭の中で行われる作業は、外からほとんど見えない。いわゆる「名もなき家事」である。
分担の不満は、感情の問題として扱うと、堂々巡りになる。事実と数字に置き換えると、話し合えるようになる。この記事では、その方法を整理する。
1. 分担表をつくる前に、決めておくこと
目的は「公平の証明」ではない
分担表の目的は、どちらが多くやっているかを証明して、相手を責めることではない。目的は、2人の見え方の違いを知り、これからの分担を決める材料にすることである。この前提を、最初に、夫婦で確認しておく。
「家事」の範囲を、広く取る
次の3つに分けると、見落としが減る。
- 作業: 料理、洗濯、掃除、ゴミ出し、送り迎え、入浴・寝かしつけなど、体を動かす作業。
- 管理(段取り): 献立を考える、買い物リストをつくる、学校・園のお知らせを確認する、予防接種や健診の予約をする、持ち物を把握するなど、考えて・思い出して・手配する作業。
- 感情・関係の仕事: 子どもの悩みを聞く、祖父母や親戚とのやりとり、近所づきあい、行事の調整など。
分担でもめるのは、「管理」を見落としている場合が多い。作業を半々にしていても、管理を一方が一手に引き受けていれば、負担感は大きく偏る。
2. 分担表のつくり方(4ステップ)
ステップ1:やっていることを、すべて書き出す
家事・育児で行っていることを、1週間の生活を思い浮かべながら、付箋やメモアプリに1件ずつ書き出す。夫婦で、別々に書く。
ステップ2:「誰が、主にやっているか」を付ける
書き出した項目ごとに、主にやっている人を付ける。「自分」「相手」「半々」の3つでよい。夫婦それぞれが、別々に付ける。
ステップ3:2人の回答を並べる
別々に付けた回答を、並べて見る。ここで見るのは、次の点である。
- 一致している項目: 認識が合っている。そのままでよい。
- 食い違っている項目: 「自分がやっている」と、お互いに思っている項目。見えていない作業があるサイン。
- 誰もやっていない項目: 後回しになっていて、不満の種になっている項目。
ステップ4:変えるのは、1〜2項目だけにする
一度に、全部を変えようとしない。差が大きい項目から、1〜2項目を選んで、新しい分担を決める。決めたことは、紙に書いて、見える場所に貼る。1か月後に、見直す日を決めておく。
3. 話し合いのコツ
- 「どちらが悪いか」ではなく、「2人の見え方の違い」として扱う。
- 「あなたはやっていない」と言わない。 「この作業が、私には見えていなかった」と、事実から話す。
- 感謝を言葉にする。 見えていなかった作業に気づいたら、まず、「ありがとう」を伝える。
- 完璧を求めない。 相手のやり方が、自分と違っても、結果が大きく変わらなければ、口を出さない。
- 話し合いが感情的になったら、時間を置く。 夜遅くの話し合いは、避ける。
- 負担が大きい側が、休める時間を、先に決める。 週に数時間でも、一人で過ごせる時間を確保する。
4. 分担を決めるときの視点
分担は、時間・体力・得意・仕事の状況で、変わる。次の点を考える。
- 仕事の負担: 勤務時間、通勤時間、繁忙期。収入の差だけで、家事・育児の量を決めない。
- 体力と健康: 病気、妊娠・産後、疲労の状態。
- 得意・不得意: 向いている作業を、中心にする。
- 子どもの年齢: 年齢によって、必要な世話が変わる。分担も、定期的に見直す。
- 外部の力: すべてを夫婦でやろうとしない。家事代行、一時預かり、自治体の子育て支援など、使える手段を検討する。
5. 自分の状況を数字で見る
あなたから見た家事・育児の負担の偏りを、数字で確認できる診断がある。パートナーにも同じ質問に答えてもらい、結果を並べて見ることをおすすめする。
6. 一人で抱え込んでいるときは
話し合っても改善せず、疲れが限界に近い場合は、夫婦の問題としてだけでなく、心身の問題として、外部に相談してほしい。
- お住まいの自治体の子育て支援窓口: 一時預かり、ファミリー・サポート・センターなどの案内。
- 産後1年未満の場合: 市町村の産後ケア事業(母子保健法17条の2)。
- 気持ちが落ち込み、眠れない・食べられない状態が続くとき: 医療機関(精神科・心療内科、産婦人科)への相談。
- 身の危険を感じるとき: 警察(110番)、DV相談プラス(0120-279-889、24時間)。
まとめ
- 分担の不満は、見えている範囲の違いから生じる。とくに「管理(段取り)」は、外から見えにくい。
- 分担表は、「誰が悪いか」を決めるためでなく、「2人の見え方の違い」を知るためにつくる。
- 4ステップ:書き出す → 主にやっている人を付ける → 並べる → 差の大きい1〜2項目だけ変える。
- 話し合いは、事実から。感謝を言葉にし、感情的になったら時間を置く。
- 限界のときは、夫婦だけで抱えず、公的な窓口や医療機関に相談する。
※本記事は一般的な情報であり、個別の事案への助言ではありません。この記事は、監修者の阿部泰尚が内容を確認しています(監修範囲は監修者紹介をご覧ください)。