浮気があれば、必ず離婚できるわけではない
相手が浮気をしたなら、離婚したいと思ったとき、離婚が認められるのは当然だ、と考える人は多い。ところが、法律は、そう単純ではない。
まず、話し合い(協議)で離婚する場合は、離婚の理由を問われない。 夫婦の合意があれば、理由が何であれ、離婚できる。
しかし、相手が離婚に同意しない場合は、話し合いでは決まらない。そのときに問題になるのが、裁判で離婚が認められる理由(法定の離婚原因)である。
民法770条は、夫婦の一方が離婚の訴えを提起できる場合を、次の4つに限っている。
- 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
- その他、婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
不貞な行為は、その筆頭に挙げられている。しかし、不貞な行為があっても、裁判所が離婚を認めないことがある。
この記事では、不貞行為の意味と、離婚が認められる条件、証拠の考え方を整理する。
出典: 民法(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)、家事事件手続法(同 https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000052)。2026年10月15日確認。
1. 「不貞な行為」とは
法律上の「不貞な行為」は、一般に、配偶者のある人が、配偶者以外の人と、自由な意思に基づいて、性的な関係を持つことを指すと考えられている。
そのため、次のような行為は、それだけでは、通常は不貞行為とまでは評価されないことが多い。
- 食事や、2人での外出
- メッセージのやり取り
- 手をつなぐなどの接触
ただし、これらが、婚姻関係を深く傷つけた場合には、後述の4号(婚姻を継続し難い重大な事由)として、離婚の理由になる可能性がある。
2. 離婚の手続きの流れ
離婚には、3つの段階がある。
- 協議離婚: 夫婦の話し合い。合意すれば、離婚届を出して成立する。理由は問われない。
- 調停離婚: 話し合いがまとまらないとき、家庭裁判所の調停で、第三者を交えて話し合う。
- 裁判離婚: 調停で合意に至らなければ、離婚の訴えを提起する。ここで、民法770条の離婚原因が必要になる。
離婚の訴えを提起しようとする人は、まず家庭裁判所に調停を申し立てなければならない(調停前置主義、家事事件手続法257条)。いきなり訴訟に進むことは、原則としてできない。
3. 不貞行為があっても、離婚が認められない場合
民法770条2項は、1号から3号までの事由(不貞な行為を含む)がある場合であっても、裁判所が、一切の事情を考慮して、婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができると定めている。
つまり、不貞が認められても、夫婦関係の全体を見て、「結婚を続けるのが相当」と判断されれば、離婚が認められないことがある。
4. 浮気をした側から、離婚を求めることはできるか
不貞行為をした側(有責配偶者)から、離婚を求めることについては、判例上、認められにくいとされている。自分で婚姻関係を壊しておいて、離婚を求めることは、相手に対して酷だと考えられるためである。
もっとも、判例は、一定の条件(たとえば、長期間の別居、未成熟の子がいないこと、離婚によって相手が過酷な状況に置かれないことなど)がそろった場合には、有責配偶者からの離婚請求を認める余地を示している。どのような場合に認められるかは、個別の事案ごとの判断であり、一般論で結論を断定することはできない。
5. 証拠の考え方
離婚の訴えや、慰謝料の請求では、不貞行為があったことを、請求する側が示す必要がある。
証拠になり得るもの(一般論)
- 不貞をうかがわせるメッセージ・写真・動画
- ホテルや旅行の領収書・利用履歴
- クレジットカードの明細、交通系ICの履歴
- 相手が不貞を認めた発言の記録(録音・書面)
1つの証拠だけで足りるとは限らない。複数の事実を積み重ねて、不貞があったと合理的に推測できるかが問われる。
証拠を集めるときの注意
- 違法な方法で集めない。 他人のIDとパスワードで、アカウントにログインして集めた情報などは、問題になり得る。
- 自分が正当に見られる範囲から始める。家計の明細、共有のスペース、自分宛てのメッセージなど。
- 感情のまま問い詰めない。 相手が証拠を消す原因になる。
- 記録は、事実だけを、日付と一緒に残す。
証拠として使えるかどうか、足りるかどうかは、専門家の判断が必要である。自分で判断せず、弁護士などに相談することをおすすめする。
6. 離婚するかどうか決める前に
不貞が分かった直後は、感情が大きく揺れる。離婚するか、続けるか、決めるのを急ぐ必要はない。次の点を、並行して整理しておくと、どちらの選択になっても、後悔が小さくなる。
- お金と財産: 財産分与、年金分割、婚姻費用、住宅ローン。→ 財産分与・年金分割の請求期限(離婚日で2年か5年か)
- 子ども: 親権、養育費、面会交流。→ 親権とは?共同親権で変わったこと
- 慰謝料: 請求の条件と時効。→ 浮気の慰謝料を請求できる条件と時効
- 自分の気持ち: 離婚を望むのか、修復を望むのか。
状況の整理には、浮気の疑い 状況整理チェックや、離婚前の家計・財産チェックも使える。
相談先
- 弁護士・法テラス: 離婚原因の見通し、証拠の判断、手続き。
- 家庭裁判所: 調停の手続きの案内。
- 夫婦・家族のカウンセリング(公的・民間)。
- 身の危険を感じるとき: 警察(110番)、DV相談プラス(0120-279-889、24時間)。
まとめ
- 協議離婚は、理由を問われない。相手が同意しないときは、民法770条の離婚原因が必要になる。
- 不貞な行為は、離婚原因の1つ。ただし、不貞があっても、裁判所が婚姻の継続を相当と認めれば、離婚が認められないことがある(770条2項)。
- 離婚の訴えの前に、まず家庭裁判所の調停を経る必要がある(家事事件手続法257条)。
- 不貞をした側からの離婚請求は、認められにくい。
- 証拠は、違法な方法で集めず、事実を積み重ねる。判断は専門家に。
※本記事は一般的な情報であり、個別の事案への助言ではありません。この記事は、監修者の阿部泰尚が内容を確認しています(監修範囲は監修者紹介をご覧ください)。